ドン引きした女性からのご提案9
彼女は再び口を開いた。
「貴方のことは前から話していたわ。そうしたら直接貴方と会ってみたいって話になったの。でも、貴方とのデートはホテルでしょう?だから今回いい機会と思って連れて行ったの」
如何に開放的とは言いながらも普通は不倫相手を実の娘と会わせるなどあり得ない。
「何か他にも理由があるんじゃないの?」
私は質問した。
「さすがに鋭いわね」
彼女は妙なことを誉めた。
「いや、親子の関係もいろいろとあっていいとは思うけど、あまりに特殊だよね。興味本位というのはあってもさすがに会おうと思うのは何らか理由があるんじゃないかな?と思うのは考えて当たり前じゃないかな?」
その後、私は少し言うのをためらいながらも続けた。
「もしかして金のことかな?借りたいとか?」
彼女は頭を振った。
「そうじゃないの。でもね、その経済的な余裕も娘が会いたがった理由の一つでもあるわ。あとは貴方の育ち、性格、学歴、今の立場」
何を言っているのかわからなかった。
彼女は続けた。
「娘にはこれまで、本当に悪いことをしたと思ったわ。だから極力、これから娘のリクエストには答えたいと思うの。あの子ね、今、すぐ近くでお店をやっていて、そこそこ稼いでいるの。だからお金は求めないわ。もっと切実なこと。あの子の親としてのお願いがあるの」
私は「ごめん、ちょっとトイレ」と言って席を立った。
金以外で何を求めているのかな?と思った。
経済的な余裕、育ち、性格、学歴、立場。
まさかな、と苦笑した。
そんな訳はないと。
しかし、そのアホな予想は的中したのであった。