ドン引きした女性からのご提案10
私がトイレから帰ると彼女は驚くべきことを話したのであった。
「娘は経済力もあるんだけど。でも、やっぱり一人というのは嫌だと言うのね」
私は言った。
「うちの会社で娘さんにお似合いの彼氏を紹介しろ、と」
私は思っていたこととは違うことを言った。
彼女はちがう、ちがうと頭を振って話を続けた。
「もう結婚はいいというの。それに口説かれることも多いと言うのよね。だからセックスもそこそこ満たされてるみたいなの」
なんか、まさかな、と思っていたことに話が行っている。
「あの子ね、子供が欲しいみたいなの」
私は「あぁ、やっぱり」と思ったのであった。
「まさかな」が当たったのである。
「あの子の中に貴方のDNAを植え付けて欲しいの。私は貴方のことをよくわかっているつもり。だから私からすると孫になっちゃうけど、貴方のDNAが欲しいの。あの子だって貴方のDNAを欲しているわ。貴方の優秀なDNAが欲しいのよ」
私は似たような言葉を20年以上前に二度聞いている。
その時は無論、自らの子供に私のDNAを引き継がせたい、つまりは結婚して欲しいと言われたのだ。
求愛の言葉であったのであろう。
しかし、その二人とは性交渉をする前にお付き合いを止めた。
まず、私のDNAが欲しいのか?と思ってしまった。
今思えば、結婚生活に於て子供の存在は最重要である。
だからその女性たちは20代にも拘わらず、賢明な頭の持ち主だったのかもしれない。
しかし、当時の私は幼稚であったのか、わがままであったのか?
DNAより前に「俺自身を好きかどうかだろ?」と思ってしまったのである。
いや、それは今でも間違いではないと思っている。
しかし、その台詞を40代にもなって言われるとはね。
彼女は続けた。
「貴方には迷惑はかけないわ。それに貴方にはメリットだってあるのよ」
何のことか意味がわからなくなってきた。
つづく。