若き頃の不倫の追憶16~「旅行」
はっきり言うともうグダグダな関係になっていた。
別に悪い意味ではない。男女の関係においてはかなり親密になっていったということである。お互いの立場も考えずに。それがグダグダという意味である。
「いけない関係」という興奮するワードを楽しむ時期はやがて失われる。その時に「本気かどうか?」がそれ以降の二人の関係を継続させるかどうかに繋がるもの、ということなのである。
そういう意味では本気であったのは私だけでなく、大人であったはずの彼女もそうであった。
ラブホに行くということだけではない二人の時間の過ごし方はやがて旅行に行こうということになる。
自然な流れだ。もはや彼女もそうした時間を確保できるだけのものを生活の中で得ていた。一年前にはよもやそんなことをすることを想像もしなかったであろうし、だから時間を作ろうとさえしなかったものと思う。
要するにガードが硬い、緩いは別にして、今までにない時間は作ろうと思えば作れるということなのである。そうした時間があることさえ、想像にだしない時にはただ「作れない」という想像に駈られるものである。
私は彼女を伊豆という地域に誘(いざな)った。
そこは小さい時から家族旅行に行っていた場所であり、それが興じて父が別荘を持ったところでもあった。
更に言えば、彼女とお付き合いをするきっかけとなった女性との最後の地も伊豆というところであった。ここからその女性を海外に送り出した。
そんな土地に彼女を連れていくのは甚だデリカシーのない話であるのかもしれないが、一方でそこしかレパートリーがないという現実もあったのだね。
とにかく伊豆に行った。
半島の先端に近い下田というところであった。
思い出の地であった。
最初は確かプリンスホテルに行ったと記憶している。
しかし、いつの間にか伊豆急下田駅の近くのビジネスホテルになっていた。
それくらい頻繁になっていたということだね。
2階の角部屋は私たちのお気に入りであった。
ちょっと広かったんだよね。
着くととにかくセックスをしていた。
勿論、観光や釣りをしたこともあったが、メインはセックスであった。
ビジネスホテルであったから彼女のあえぎ声はフロアに響いていただろう。
いつだったろうか?ファミリーレストランでモーニングを食べていたら会社の同期に出会った。
無論、向こうは年相応の彼女を連れていたけどね(笑)
同期の中でも「真面目」と受け取られていた私が「熟女」を連れている姿を見て、かなり驚いていたことを覚えている。
この歳になっても彼女さんと旅行には行きたいな、と思う。
そして現に行ったこともある。
前カノとも行ったな。
道内が中心であった。
網走、旭川、函館、帯広、富良野、ニセコ…その後仕事で行くと思い起こされる。
別れというものは辛いが良き思い出というものはいつまでも心に残る。
今の彼女さんともたくさんの思い出を作りたい。
刹那的に言っているわけではないよ。
つづく