ベンツに乗る女~その7
乾杯をして食事を始めた。
しばらくはその日のドライブの話をしていたが、私はアルコールが入るとその夜の話をすることにした。
彼女は経営者であり、同じような経営者たちとのお付き合いがあることは容易に推察できた。ドライブ中も飲んでいても話は上手い。
しかし、それは仕事上のものであり、男女の仲としては慣れていないということも予測できたのである。
当たり前の話ではあるが、ここは私から切り出すしかないのである。
「もしかして、今日は帰らなくても大丈夫かな?」
軽いトーンで聞いてみた。
彼女はちょっと驚いたような表情を見せ、そしてうつむき加減に頷いたのであった。
50歳を過ぎた熟女である。
しかし、その態度は少女のそれに近いものがあった。
口説いた、という状態になると彼女の口数は極端に減った。私が投げかける言葉に相づちを打つのがやっとであった。
その代わりに酒のピッチが上がった。
上気した顔の火照りをクールダウンしようとしているのかもしれないが、それはいっそう興奮を助長しているかのように見えた。
潰れてもらっても困る(笑)
「次、行こうか?」
私は居酒屋から出るように促した。
線路端を歩いて行けばラブホがあることを知っていた。そこを使うことなど、想像だにしていなかったのであるが。
私はそこに向けて歩を進めた。
私の左手の中には彼女の右手があった。
師走の夜は寒かったが、汗でぐっしょりと濡れていた。
もうホテルに着く、という時に彼女は言った。
「こういうことって初めてなので…」
「心配しないで大丈夫ですよ」
ホテルに入り、個室を選択したのであった。
つづく