若き時の不倫の追憶15~「手料理」
ある時歳上の彼女は家を離れた。
旦那さんの度重なる不貞に嫌気がさしたのか?
いや、私という存在がそうさせてしまったのか?
それはずいぶん後まで私の「悩み」となるのであった。
とにかく彼女は一人暮らしを始めた。
杉並区にある古いマンションであった。
とにかく彼女のことが好きで好きで仕方なかった私は無論そこに転がりこむことになる。
週末は今まで通りであったが、平日も彼女の下に帰るようになった。
二人で生活するようになったのであった。
隣にあるカレー屋にはよく行った。
そこで夕食を摂り、ビールをよく飲んだものだ。
フィッシュカレーをよく食べたな。
カレーに鱈のフライが乗っているものであった。
私の仕事は年を経るごとに忙しくなっていった。
今までなら、彼女に合わせて「会える時間」に無理もしながら行っていた。
しかし、今や彼女の家に帰れば、そこに彼女はいて、好き放題我が物にできるのであった。
皮肉なことに私が一番仕事を覚えたのはこの時期であった。
ひとつ過去と違ったのは彼女の手料理を食べれることであった。
私が帰れば晩御飯と酒が用意されていた。
幸せであった。
たまに彼女が好きなマンゴーを土産に買って行っていた。
なんとなく新婚気分だったのである。
私は今も料理を作るのが好きなのだが、当時もそこそこ好きで実家で作っていたから、料理の大変さは理解しているつもりであった。
だから彼女には「ポークピカタ」を作ってくれるように頼んでいた。
工程はある。
しかし、大変ではない。
そうした料理が好きという象徴として「ポークピカタ」を作ってもらうことが多かった。
現に美味しかった。
彼女の手料理はポークピカタだったのであった。
たぶん今でも「旨い」というだろう。
私もたまに作るが、彼女の味は乗り越えられない。
私は今の彼女の手料理を食べたことがない。
前カノのものは何度となくある。
お弁当を作ってくれたことも何度もあるからね。
おそらくなんだが、今の彼女さんはあまり料理が好きではないらしい。
仕方ないことだよね。
でもそれでいいのさ。
もしセカンドパートナーにまでなれたら、私が作ればいい話。
好きな者がやればいい話さ。
彼女さんに「美味しいね」と言ってもらえるくらい腕を上げないといけないね。