先生を生業とする女4
「直接お会いしてお話してみたいです」
そう言ってきたのは彼女の方であった。
ここで焦ってはいけない。攻守逆転したのであるから寧ろ「焦らした方がいい」と思ったのである。
「もう少し貴女のことを知りたいです。お仕事のことはよくわかりましたが、趣味はなんですか?」
プロフィール欄に具体的には書いていなかったものの「趣味に没頭」と書いてあったから、それに触れてみたのだ。
とたんに長文のメールが来た。
私は彼女のメールにとにかく「共感」と「同意」をして親和性を高めることに努めたのであった。
「この人は話を聞いてくれる人」という印象をつけていったのであった。
そして、彼女の自己アピールも増えていったのであった。
笑顔を誉められる。声がセクシーと言われる。肌がきれいと言われる。微妙にエロいと言われる。足がきれいと言われる…
私は「今からお会いするのが楽しみです」とその度に返した。
業を煮やしたのであろう。
「お会いできるとすればどのような時が都合がいいですか?」
私は
「お互いに既婚者ですから週末は出にくいと思います。それに貴女の趣味の時間に差し障りがあってはいけません。もし手前勝手を申すならば、平日の夜は如何ですか?」
とした。
彼女の都合も考慮してのように書いているが、完全な私の自己都合なのである。
要するに関係は少し悪化している時ではあったが、週末はステディとのデートは欠かせない。変に都合を変えると疑われかねないのだ。
「私も平日の方が助かるわ。あまり長い時間は過ごせないかもしれないけど。来週の火曜日か水曜日は如何?」
ついに具体的な日程がきた。
幸いなことに両日とも接待などは入っていない。
「水曜日は如何でしょうか?」と私は返信をした。
つづく