ベンツに乗る女~その3
出会い系サイトで出会えるためには相手の話題に合わせるというのが近道だと思っている。
これは普段やっている営業の仕事に近いと考えている。
モノを売ろうとしすぎればモノは売れない。そんなにモノは簡単に売れない。先ずは自らを売ることだ。
そして出会い系は自らを売り込み過ぎたらダメだということくらい7年の経験でわかっていた。
モノを売るには自らを売ればいい。しかし、自らを売るのは容易いことではない。
ではどうしたら良いか?というと相手の話を聞くということに徹するということに尽きる。つまりは聞くことによって安心感をもたらすということだ。
「この人は話を聞いてくれる」
そう思わせることが女性と仲良くなるコツであると思っている。
そこにはあまり結論はない。つまりは悩みがあっても解決策を出さなくても良いということと理解している。その点は男性と会話するよりも面倒くさくはない。
ただ、話をさせるように仕向ける必要はある。
ただ意外と楽だな、と思ったのはこの女性が「経営者」である点だ。
何故なら、私の仕事上、経営者と話するのは慣れているからだった。
そして、経営者としての悩みもわかっているつもりであり、彼ら(彼女ら)は孤独であることもわかっていた。
私は普段経営者にメールするようにサイトを通じて彼女にメールをした。
日に10回ほどメールのやり取りが交わされた。
外してはならないのは朝と晩の挨拶であった。
「おはようございます」
「おやすみなさい」
彼女の日常に入るのは意外とこれで十分なのだ。
挨拶という礼節と1日の始まりと終わりに彼女に一番近い存在であることが孤独感を払拭させた。
それを証拠に私のメールに対する返信は日に日に早くなってきた。ペースは私のものになっていた。
「貴方のようなパートナーがいてくれたら助かるわ」
それは「会いたい」というに等しいと解釈した。
「今度お食事でも如何ですか?」
このような出会いに慣れていないのだからトドメは私が刺すしかない。
答えは無論、ノーではなかった。
つづく