先生を生業とする女8
それはそれは一瞬焦ったのである。
かなり絶叫に近かったのである。
賑やかな店内も一瞬静かになったような気がした。
しかし、しばらくすると元の賑やかさに戻ったのであった。
胸を撫で下ろした。
私はまだ激しく息をしている彼女の股間を数枚のティッシュで拭き取った。
かなりの湿度を帯びたそれをもう1、2枚のティッシュでくるんでズボンのポケットに押し込めた。
彼女も我に返った感じで着衣の乱れを直していたが、目は潤んでおり、何度も私にキスを求めてきたのであった。
「このまま朝まで過ごす?」
時間に制限があると言って夜会っても、それはややもったいぶっているだけで、たぶんそうしてしまえばそれなりに対処するものである。
だから私がもしそう言ったら、無論その続きはホテルで行われ、翌日の私の寝不足は間違いないのであった。
完落ちさせるにはそれが一番の近道。
しかし、それをしなかったのは、この女性との関係は所詮「浮気」でしかなかったからである。
「本気」には最初からなりえないお相手だったのである。
私たちはわざとらしくもう一杯ずつドリンクをオーダーした。
「次いつ会えるかな?」
と言ってきたのは彼女の方であった。
近々、セックスをするためのデートを個室で約束して居酒屋を出た。
彼女をタクシーに押し込め、ドライバーに5000円札を渡して彼女を家に送るよう促した。
「なんかバブリーだな」
苦笑した。昔を思いだした。
私はまだ時間が早かったこともあり、地下鉄に乗った。
最寄り駅で降りた時に切符を探そうとズボンのポケットに手が行った。
「あ、ティッシュ捨てないと」
と駅のゴミ箱にティッシュを投げ入れた時に気づいた。
ティッシュから溢れた愛液が糸を引いてズボンを汚していた。
「週末クリーニングに出さないとな」
また苦笑したのであった。
つづく