ベンツに乗る女~その9
私は自らの唇で彼女の口に軽くタッチした。
その微妙な接触を保ちつつ唇をスライドさせて彼女の口角のところでチュッと吸うとその行為をしばらく唇全体に行った。
次にはまた微妙な感じで唇を舌で舐めた。触れるか触れないかのタッチである。
「んんっ…」
彼女の口からは何とも言えない声が漏れた。
ここでやっと私は唇を塞ぐようなキスをした。そして彼女も私の唇を吸うような反応があったので、舌を入れて、前歯を舐め、そして徐々に舌と舌を絡めるようにしていった。
「私、エッチよりもキスが好き」
このように言った女性は何人もいた。
そして、この言葉は男として真に受けないといけない言葉であると思っている。
セックスにしてもそうであるが、なにも激しくすればいいってものでもない。
女性にとって唇を奪われることが大切であるとすれば、それは常に優しく切り開いていかなければならない。
そして、キスはフィーリングの問題はあるものの努力すればできるというレベルのものが多い。
「キス」という一言で済ませてしまうが、唇、舌、口内…それらのどこに女性が感じるポイントを探しながらしていくものだと思う。
女性は脳幹で逝くことがある。それを幇助する手段としてキスは最適であるし、現にキスで逝った女性もいた。
この時も彼女は私の唇や舌が敏感な部分に触れていくとビクッと身体さえも反応させて感じるのであった。
そしてこの長いキスに堪えられなくなったのであろう。
「抱いて…」
と懇願してきたのであった。
「はい」
私はにっこり笑い、彼女をベッドに導いた。
つづく